産科の現場から
2018年7月21日 カテゴリー : ニュースレター 活用例
介護や緩和ケアを中心に活用の場が広がっているヒーチングタッチ。そんな中で、出産の現場でヒーリングタッチを取り入れているクリニックがあります。沖縄県沖縄市にある産婦人科「ゆいクリニック」の島袋史(しまぶくろふみ)院長にお話をうかがいました。
出産は精神的な要素も大きい
だからエネルギーワークを取り入れたかった
島袋院長がクリニックでヒーリングタッチを取り入れるようになったのは、2013年のこと。ご自身は、実はそれよりも2年前、「ゆいクリニック」を開業する前にヒーリングタッチのワークショップ・レベル1(現ベーシック・コース)を受講されています。
「沖縄でのワークショップを主催しているのが知り合いの医師で、彼から勧められたことがきっかけでした。内容を聞いて、産科をやっていくにあたって役立てるかなと思い、何人かのスタッフと一緒にワークショップを受けました。出産ってすごく精神的な要素が大きいですよね。だから、ケアの質を上げるために、エネルギーを整えるような、精神的なものに働きかける手法はたくさん持っていた方がいいと思っているんです」(島袋院長)
そのときのレベル1のワークショップで、講師から、「チャクラスプレッド(という手技)は出産にいい」と教えられたことが印象に残りました。
「チャクラスプレッドはいろいろな場面で活用される手技のひとつですが、その作用の中に、別れのプロセスを助ける、というのがあると教わりました(編注:そのために、終末期医療の現場でもよく使われる手技のひとつです)。出産はある意味、お母さんと赤ちゃんの別れ。お母さんのお腹の中から赤ちゃんが出て、お母さんと赤ちゃんが離れていく、そのプロセスの手助けにもいいと教わったので、ぜひクリニックで取り入れてみようと思ったのです」(島袋院長)
しかし、開院当初はマンパワーが乏しかったこともあり、実際にヒーリングタッチを取り入れることはなかなかできず。その後、2013年に開催されたヒーリングタッチのワークショップをクリニックの助産師や看護師と再び受講。施術できるスタッフの数が増えたことで、2013年から本格的にお産の場でヒーリングタッチを行うようになりました。
産後のお母さんと
抱っこされた赤ちゃんをヒーリング
現在、「ゆいクリニック」では、出産したお母さんに赤ちゃんを抱いてもらった状態で、出産後24時間以内にチャクラスプレッドを行っています。
「産後神経が高ぶって、疲れているのに眠れないとか、疲れが取れにくいというお母さんが多いのですが、ヒーリングタッチをした後は、緊張が取れて、深く休まれる方が多いですね。エネルギーに敏感なお母さんだと、頭からつま先までエネルギーが通ったという感覚を持つ方もいらっしゃいます。お母さんたちには妊婦検診の際に、産後ヒーリングタッチを施術することをお伝えして許可を得ています。エネルギーに敏感で触れられるのが嫌だというごく少数の方を除いて、断られることはまずありません」(島袋院長)
こちらのクリニックでは、ケアの質を高めるために、ヒーリングタッチ以外にホメオパシーなどの療法も積極的に取り入れています。そのようなエネルギー療法との因果関係はわかりかねますが、島袋院長が以前勤めていた総合病院より、赤ちゃんの病院への搬送を必要とするケースが少ないと感じているそうです。
「以前勤めていた総合病院も自然なお産と母乳育児を推進しているところだったのですが、いろいろな経緯があって、生まれた赤ちゃんを一度診察台に乗せることがルールになって。その後にお母さんに抱っこしてもらうんですね。私は、生まれたての赤ちゃんはまず何より先にお母さんに抱っこしてもらいたいという強いこだわりがありまして、それが病院を辞め、自分で開業するに至った理由のひとつでもあります。
今のクリニックではお母さんに対するケアの質を上げることを大切にしており、スタッフが産中から産後までしっかりと寄り添って細かく出産をサポートしています。その違いが、赤ちゃんの搬送率の違いになっているのかもしれないな、と考えたりすることはあります」(島袋院長)
今のところお母さんたちの反響もいいというヒーリングタッチ。今後、母乳の出が悪いお母さんのケアにもヒーリングタッチを取り入れてみたいと島袋院長。
既に活用例やデータが蓄積されつつある介護や緩和ケアの現場に比べると、出産の場でヒーリングタッチがどう役立てるかの研究はまだまだこれからのところがあります。今後の「ゆいクリニック」の実践に注目したいところです。
文・取材:吉田聡子
取材協力・写真提供:ゆいクリニック
NPO法人日本ヒーリングタッチ協会