ヒーリングプレゼンス vol. 6 2019年4月(公開)
2019年4月25日
目次
マインドフルネス
新年度になり、そして、まもなく新元号となります。
心新たに皆さんはどのような意図を設定しましたか?
ここ数年、「マインドフルネス瞑想」がブームになり、「マインドフルネス」という言葉も広がってきました。そして、多くの方々が、マインドフルネス – 今、ここ、に集中する – ことの価値を見出しているようです。ヒーリングタッチを学び、実践する私たちも、センタリングを通して、今、ここ、に意識を向けていきます。ヒーリングタッチを行う時、今、ここ、に意識を向けるのはどうして必要なのでしょうか?
それは、ハートスペースに入るためです。私たちは、ブルー・ジョイ医師が私たちに言い伝えている4つのハートの属性を知っています。
♡思いやり(コンパッション)・内在する調和・癒しの存在・無条件の愛♡
ヒーリングタッチとは、これらのハートの属性にアクセスしながら行うケア、です。これらの属性を発揮することこそが、ヒーリングタッチである、とも言えます。このハートの属性は、誰でも持っている質です。しかし、私たちは、生きている間に様々な理由でハートの周りにフィルターをかけてしまい、必ずしもこれらの感覚を常に感じられているわけではありません。ヒーリングタッチの学びとは、少しずつフィルターを薄くして、ハートにアクセスし、ハートのスペースに入っていくこと、と言っても過言ではありません。そのためには、今、ここ、に意識を向け、集中していくことが不可欠になります。瞑想やハートに向けて呼吸を行うことは、今、ここ、に意識を向けていく手助けとなります。時代が変わる今、マインドフルな時間を心掛け、ハートセンタードな意図を是非、見出してください。
ブータン王国・瞑想の風
大下 大圓 飛騨高山千光寺住職・国際平和瞑想センター・HTSJ顧問
当会の顧問役を頂いている大下大圓です。よろしくお願いします。今年3月に、ブータン王国へ2度目の旅をしましたので、その報告をさせていただきます。
この旅には、私の友人である大学教員、医師、看護師、学生、檀家さんたち総勢11人が同行しました。ブータンでの活動は古いチベット寺院を参拝しながら、歴史ある堂内で瞑想やアルプスを見ながらの瞑想、伝統医療の施設などの見学交流で、7日間の限られた日数ではありましたが、充実した日々でした。
今回のスピリチュアルケア・瞑想研修は二つの目的を持ちました。1つは「ブータンの自然や人びとに出つは「ブータンの自然や人びとに出会い、その幸福感覚を体験すること」。2つ目は「ブータンの大自然を背景に瞑想実習を通じて、自己のいきがい観を知ること」でした。
日本の九州くらいの小さな国ですが、1976年に当時の四代ブータン国王であった「シグメ・シンゲ・ワンチュク」が、GNH(Gross National Happiness)「国民総幸福量は国民総生産よりも重要ある」という発言から生まれ、1998年に、当時の首相シグメ・イェゼル・ティンレイが、国連開発計画(UNDP)のアジア太平洋会議でこれを引用したスピーチを行って、GNPを重視してきた先進国に甚大なメッセージを投げかけることになりました。これは単に開発国を目指すのではなく、国民の幸せを増やすことを国の使命としようというものです。会い、その幸福感覚を体験すること」。2つ目は「ブータンの大自然を背景に瞑想実習を通じて、自己のいきがい観を知ること」でした。
幸せについてちょっと考えてみましょう。世界の幸福度をランキングで示したものとして、イギリスの社会心理学者、エイドリアン・ホワイトが2006年に発表した「世界幸福地図(WMH:World Map of Happiness)」がよく知られています。健康と富、教育を尺度に、世界178ヵ国を対象に調べたものですが、それを見ると、1位がデンマーク、2位スイス、3位オーストリア、4位アイスランド、5位バハマ、6位フィンランド、7位スウェーデン、 8位ブータンと続き、アメリカは23位、中国が82位、そして日本はなんと90位です。これはG7の中で最下位です。
日本国民の幸福度は、少し古いデータになりますが、2000年のものがあります。世界数10ヵ国の研究機関が参加して、各国の18歳以上の男女1000人を対象にした意識調査の結果が発表されています。日本は60ヵ国中25位ですから、国民の「幸せ感」は決して高くありません。
ブータンが提唱したGNHは、4つの目標があります。
① 健全な経済成長と開発。
② 環境保全と持続的な利用。
③ 文化、宗教の保護と振興。
④ 良い統合。
その結果ブータンの「世界幸福地図」は、第8位にランクされています。もちろん、ブータンのGNHをそのままの形で導入することで、日本の幸福度がアップするというような単純な話ではありません。でも、スリランカやブータンに暮らす人びとの考え方や生き方は、日本で暮らす私たちにも大いに参考になるはずです。
パロの小高い丘に立つキチュ・ラカン寺は、寺伝によれば七世紀にチベットを統一したツォンツェンガンポ王は、チベットやブータンにあわせて108の寺院を建立したと伝え、キチュ・ラカン寺はその一つの寺院です。本尊仏は千手観音菩薩で、凛としたお顔は気品高く、多くの善男善女のお参りがあります。今回も午後のまだ日の高いうちに、境内に入りました。そのときに本堂脇のミカンの樹が目にはいりました。
一回目に行ったときの事を思い出しました。それは境内に入った私たちに突然の疾風が駆けめぐったのです。龍の舞のようなものすごい風だったのです。本堂裏手の杉の木が、その思いがけない突風で倒れ、そのまま幡柱まで倒れてしまったくらいです。 折りしも本堂前に実をつけていたミカンの木も大きく揺れました。そして2、3個が揺らされた小枝から地面に落ちました。説明によれば、このような海抜2,300メートルのような高地ではミカンは育たず、パロの地では此処だけだそうで、このみかんは仏様だけに供えるものだそうです。
そのみかんのいわれを私たちに話してくれたソナム、ドルジイ(39歳)は、「風からもらったミカン・・・」といったのです。
「日本ならこのみかんは色も形も悪く、見るからにまずそうで、売り物にはならないなあ」と感じるところを、「風からもらったミカン」と表現するブータン人の心根がとても、すばらしいスピリチュアリティです。
近代化の中で、すべての物事を金銭的な価値に置き換えて考えてしまう今の日本人が、すでに忘れてしまった本当の価値、日ごろから信仰心を大切に生きてきたブータン人の幸福観を、目の前のブータン人から教えてもらいました。
ブータンへ行ったら是非訪れていただきたいところは、標高約3000mの断崖絶壁に張り付くように建っている「タクツァン僧院」です。その昔グルリンポチェ(パドマサンバヴァ)が瞑想したとされる洞窟があり、世界中からたくさんの参拝客が訪れるチベット仏教の聖地となっています。一生懸命登った先に現れる僧院の美しさには感動的です。
タクツァン僧院は「虎の棲家」という意味があり、ブータンにチベット仏教を伝えたグルリンポチェが虎に乗ってやってきて、洞窟の中で瞑想したとされる場所なのです。
われわれ一行も丁寧な読経と瞑想をすることができました。瞑想中にすがすがしい風を感じ、仏さまの息吹をそのまま享受できました。一行は馬を利用したりしながら、汗をかいて4時間かけて登ったタクツアン寺院は生涯忘れられないブータンの思い出となったことでしょう。
現在、飛騨千光寺境内に国際平和瞑想センターを建設しています。夏には完成して実動していることでしょう。国際平和瞑想センターでのプログラムについては、活動しながらバリエーションを増やす予定ですが、構想中のプランをお伝えします。
国際平和瞑想センターの理念、「戒」「定」「慧」「解脱」「知見」を具体的に体感する主な履修プログラムは、理論学習と実践活動です。「心身健全と健康寿命のための理論的学習(仏教やホリスティック医学)」と「健康寿命を促進するための動的活動(作務、清掃、歩く瞑想、遍路、読経、礼拝行、瞑想、観法など)」ですが、具体的な瞑想研修として、次の10のプログラムがあります。
・2時間瞑想研修プログラム(理論講義と実習)
・3時間瞑想研修プログラム(理論講義と実習)
・午前3時間瞑想研修プログラム(理論講義と実習)
・午後3時間瞑想研修プログラム(理論講義と実習)
・1日6時間瞑想研修プログラム(理論講義と実習)
・2日間瞑想研修プログラム(理論講義と実習)
・3日間瞑想研修プログラム(理論講義と実習)
・7日間瞑想研修プログラム(理論講義と実習)
・1ヵ月瞑想研修プログラム(理論講義と実習)
・長期滞在瞑想研修プログラム(理論講義と実習)
事前に研修希望者と情報交流(アセスメント)をさせていただき、その人に一番ふさわしいプログラムを展開していきます。さらに、若いビジネスパーソンなどが、生活や仕事の合間に瞑想を取り入れて、自己のメンタルヘルスに活用できるような研修プログラムも用意しています。詳しくは千光寺ホームページ、もしくは、国際平和瞑想センターへお問い合わせください。 http://senkouji.com/
ハワイでの体験
大木 恵美子 看護師、HTI-P
2018年12月始めから2019年2月末にかけて、ハワイで過ごしました。不安がありながらも、仕事を退職してまで行こうと思った理由は3つあります。①海外の看護ケアや介護事情、癒しのケアをみてみたい、②自分のこれまでの看護の考え方の見直し今後のケアに生かすためのヒントがほしい、③南国ハワイでゆっくりヒーリング体験をして休養したい!というものでした。
Nagomi Foster Homes
私が3か月インターンとしてお世話になった『Nagomi Foster Homes』は、2014年にチャリティーで始まりました。米国の医療保険制度は、日本と全く違います。当然、介護保険もありません。「お金がないと生きられない。お金がないと選べない。」という状況が日本よりも顕著という印象を受けました。Nagomiでは支払い能力の有る無しに関わらず、ホスピスケアや日本風の日常ケアが受けられます。スタッフも患者さんもほぼ日本語でしたから、英語が苦手な私は大変助かりました。Nagomiには、介護ケアをしたことがなく、学びながら勤務しているスタッフもいます。日常のケアは医療的処置以外のスケジュールがほとんどありません。その日
その時に最善と思うケアを、スタッフが出来ることで関わります。つまり、患者さんにとっては家と同じであり、施設ルールは最小限です。オーナーのKさんは、赤ワインを片手にブランコに揺られながら「まあ、厳しい面もありまっせ~。」と、施設の実情を飾ることなくあっけらかんと笑って話します。スタッフの皆様も「何とかなるし、なっちゃうんだよね。」と笑います。患者さん主体に、強い信頼関係の中、おちゃめに寄り添いあっていました。
療養環境でのタッチング
癒しの南国リゾートハワイでは、タッチングが溢れています。それに付随してマッサージを仕事としている方は多く、その方法も多様化しています。ただし、ロミロミというハワイ伝統的なマッサージの方法は、一家に伝わる健康法、医師やヒーラーによる伝統的な癒しの実践、自然との調和や祈りという目的があります。伝統的なロミロミはロコたちの宝であり、スパなどで気軽に受けられるリラクセーションのそれとは異なるそうです。
いずれにしても、日本と違い文化的にタッチングの垣根は低いと感じました。エネルギー療法ではレイキがメジャーで、病院や介護施設で施術している所もあるようです。ヒーリングタッチはボランティアが主でホスピスなどで行われています。今後、私も看護ケアの一つとしてタッチを積極的に取り入れていこうと思います。
安全な場での癒しのケア
ボランティア経験をした中で、印象的な場所の一つは、ホームレスのシェルターです。企画者はチャプレンの女性です。普段からホームレスの方の一人ひとりの言葉を傾聴する活動をされている方です。この日のボランティアで参加したのは合計7名ほどで、ネイルをする人、髪を切る人、ハープを演奏する人、マッサージをする人、食事を運ぶ人、そしてヒーリングタッチをする人でした。
この日の利用者は成人女性と子供たちで、約30名ほどでした。始めは笑顔もなく、重たい足取りで部屋へ入ってこられた人たちが、安全な場所、ベット、温かい食事、癒しのケアによってみるみる目の輝きや自信を取り戻していくのがわかりました。最後に担当した一人の女性は、ライフレビューを語ったあと、私たちのワークへの称賛とハグをくれました。そして、紙幣7ドルと一つの梨を私たちに差し出しました。受け取っていいのか戸惑っている私に、チャプレンの女性や仲間らが「彼女の思いだから受け取っていいのよ。」と言ってくれたので、その思いを喜んで受け取ることにしました。本当にうれしかったです。
ヒーリングタッチは、言葉や文化の壁も飛び越えます。そして、双方にとって安心で安全で平等なヒーリングタッチを経験し、この学びがもっと好きになりました。
感謝
2017年11月、東京でのワークショップで初めて出会ったハワイ在住のMさんは、ハワイに来ませんか?と声をかけてくれました。この日の日記には“そうだ!ハワイへ行こう!”書いてありました。そして2018年11月、本当にたくさんの方に協力していただき、ヒーリングタッチ・プラクティショナーをいただいた後、気持ちよくハワイへ行くことができました。現在はHTI認定プラクティショナーに向けて準備中です。
ヒーリングタッチの恩恵を受け、ゆっくりペースですが自分らしい旅を続けています。
光をこめて…。 Aloha & Mahalo
2018年度HTSJ通常総会報告
2018年度のHTSJ通常総会が、2019年2月16日(土)に開催されました。本年度は、13名の会員が参加されました。2018年の事業報告および収支決算、2019年の事業計画および収支予算を含めた全ての議案が、出席者及び委任状の過半数の承認を得て、滞りなく終了いたしましたことをご報告させていただきます。
2018年度は、アドバンスⅡやプラクティショナーⅡ開催により、専門家へのステージアップと個々人の意識の高まりにも繋がっていき、入門ワークやベーシックコースの外部派遣講師依頼やスペシャルセミナー開催など、新しい分野へもチャレンジして参りました。徐々にヒーリングタッチの認知度も広がりつつあり、2019年度へ繋がるよい兆しの年になったようです。また、HTSJを立ち上げてから初年度入会の方は、2年間の有効期間特典だったために、今回が初めての会員更新の年でもありました。2018年12月31日現在での入会状況は、51名の中、更新手続きが終了された会員は、27名でした。
2019年度はHTSJも3年目を迎えます。これまで中心に活動してきた東京から枠を広げ、ひとりでも多くの皆様が、ヒーリングタッチを体験したり、学べる環境づくりを工夫していきたいと思います。また、昨年までにアドバンスⅡを受講されたスチューデントの学びを深めるための勉強会や体制強化を図ります。そして、スチューデントおよびプラクティショナーが社会貢献にヒーリングタッチを活用できるように、ボランティアの機会の提供などの支援活動を積極的に推進して参ります。
総会最後の意見交換会では、日々練習に励んでいる会員の皆さまから、社会貢献活動やボランティア活動に対する積極的、かつ熱い意見が飛び交いました。常に真剣にヒーリングタッチの学びを深め、そして向き合っている会員のこの情熱を何とか受け止め、共鳴しながら地道に前へ進んで歩んで行きたいと強く心に響くメッセージを受け取りました。
今年は、平成から令和へと新たな元号に変わり、変革、変容の年と言われています。今まで培ってきた熱い想いとハートの4つの属性を心に刻みながら、共に未来に向かって愛と癒しの光で輝かせましょう。
文: しばたあきこ
お知らせ
HTSJ 2019 スケジュール
4月20日‐21日 ヒーリングタッチ・ベーシック
5月18日‐19日 ヒーリングタッチ・アドバンスI
5月25日 ヒーリングタッチ練習会
6月2日 ヒーリングタッチ入門ワーク
6月23日 ヒーリングタッチ練習会
6月29日 ヒーリングタッチ・モニター体験会
9月29日 ヒーリングタッチ・モニター体験会
*2019年の今後のコースワークは、依頼に応じて出張コースワークにて行います。
*練習会またはテクニックレビューは、毎月1回、その他、ヒーリングタッチ入門ワークや体験会を予定しています。詳細が決まり次第、お知らせメール、WEBサイトにて告知いたします。
ボランティアスタッフ募集
HTSJでは、ボランティアスタッフを募集しています。作業時間や内容は、ご希望やスキルに応じます。作業分野としては、①各種講座運営、②企画、③広報・宣伝、④経理・財務、などです。ご応募、ご質問は、info@healingtouch.or.jp までご連絡ください。
会員の皆様からの寄稿をお待ちしております。
ヒーリングタッチの実践、応用、練習会の体験など、是非、お寄せください。
ご投稿、ご連絡、お問合せ先:
info@healingtouch.or.jp
Healing Presence
–HTSJ会報誌- 年4回発行
編集チーム
しばたあきこ、戸田美紀、中村則子、 古川綾子